赤字を出した企業にとって、「繰越欠損金」という制度は、まるで税金のポイント制度のようなものです。
損失を出したとき、税務署が現金で「損失分を返してくれる」わけではありません。その代わり、未来の黒字に対して課税されるはずの税金を軽減する“ポイント”のような役割を持つのが「繰越欠損金」です。
この“ポイント”は、翌期以降に利益が出たタイミングで使うことができます。利益と相殺することで、課税所得が減り、支払う法人税が減少します。利益が出るからこそ、ポイントのように活用できるのです。
しかし注意が必要なのは、「利益が出なければ使えない」という点です。慢性的に赤字の会社や、利益体質に改善できない企業にとっては、このポイントはただの“絵に描いた餅”となってしまいます。
繰越欠損金の有効期限は原則10年。それまでに使い切れないと、ポイントは消滅してしまいます。つまり、期限内に利益を出せるかどうかが、この制度を活かせるかの分かれ道になります。
実は、有効期限が迫っている繰越欠損金も、税務戦略によって有効活用することが可能です。
たとえば「保険」や「オペレーティングリース」を利用して、繰越欠損金と同額の損失を“先に”出し、その損失に見合った利益を“後から”生むようなスキームを設計すれば、実質的に繰越欠損金の期限を「延命」することもできるのです。
繰越欠損金は、経営の波を乗り越えるための“貴重なリソース”です。税金のポイントをうまく使い切るには、利益計画とタイミング調整がカギ。「ポイントを無駄にしない」ためにも、自社の損益をしっかり把握し、戦略的に使っていきましょう。
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